私にはイヤな癖があった。
言葉で自分が攻撃されたと感じると、即座に言い返す癖だ。
相手の痛いところを突いたり、言い負かすと、勝った気になって鼻の穴を膨らませたものだ。
どんなに上手く切り返せるか、相手をやり込められるか、が見せどころのように思っていた。
理屈で相手の逃げ道を封じ、自分の正当性を認めさせることに快感を覚えた。
ニヒルな捨て台詞や嫌みを口にするのはかっこいいとあこがれてさえいた。
人の間違いを指摘するのも得意だった。
相手を貶めることでなんとか上に立ちたいと見栄を張っていたのかもしれない。
自分に自信がなかったのだと思う。
弱みを認める勇気もなかった。
人を馬鹿にしていながら、いつも自分の評価を気にしてびくびくしてたんだろう。
そんな勘違いに気づいたのは、長い人生の後半に入ってからだ。
今、こうして振り返ることができるのは、奇跡のような気がする。
失ったものは多い。
しかしまた、それを経て得たもの、残ったものもある。
過去の自分は恥ずかしいところばかりだったけど、消すことができるわけじゃないし、その時はそれで一所懸命だったんだとも思う。
全てに意味はあったと思う。
変えることができるのは、未来だけ。
だから、偉い人になろうなんて思わない、いい人間であろう、ありたいと思うだけだ。
藤井風さんがこれを歌にしてくれた。